１．FAP療法について
FAP療法(Free from Anxiety Program:不安からの解放プログラム)は、2001年に大嶋信頼氏らにより日本で開発された、トラウマを解消するための革新的な心理療法です。
「トラウマ」という言葉を聞くと、災害などの大きな心の傷というイメージがありますが、幼少期の影響も大きく関係しています。
- PTSD(心的外傷後ストレス障害)として知られる大きな衝撃によるもの
- 幼少期の持続的な緊張やストレス環境によって形成されるもの
また、日常生活で「何か気になること」があり、それが頭から離れず集中できないような軽度の症状にも、FAP療法は効果的です。
緊張が高く支配的な家庭環境で育ったことによる「トラウマ」の影響は、次のような形で現れることがあります。
- 不安や緊張が高く、ストレスを受けやすい
- 人に馴染みにくい
- 自信が持てず、自分を責めたり否定したりする
- 過去のことが気になり、こだわってしまう
- やる気が起きない
- 支配的な親子関係
- 人間関係の問題 など
これらは誰にでもある悩みのように思えますが、実はトラウマの影響なのかもしれません。
２．トラウマの解消とは
トラウマが起きるメカニズムを見ていきます。
私たちは日常で様々な感情を体験します。通常、ある状況で感じた感情は「この状況」=「この感情」というように脳内で結びつき、整理されて保管されます。
しかし、経験したことのない状況や強い感情に直面すると、「この感情は何？」と混乱し、一種のパニック状態のようになることがあります。このとき「状況」と「感情」が整理されずバラバラのまま脳に保管されてしまいます。
特に幼少期は感情がまだ発達途上のため、状況記憶と感情記憶が整理されず、「よくわからない恐れ」やよくわからない「感情」として残りやすくなります。
この未整理の記憶を持ったまま大人になると、
特定の状況でそれ程恐れる必要はないとわかっていても原因不明の恐怖を感じ、自分でも理解できない反応や望ましくない行動パターンを繰り返したりすることがあります。
FAP療法では「トラウマ反応」や「トラウマの再上演」と呼ばれるものです。
この「状況記憶」と「感情記憶」の統合を促し、トラウマを解消していきます。
３．FAP療法によるトラウマの解消法
FAP療法は「ノイズキャンセリングヘッドフォン」のような仕組みで理解できます。ノイズキャンセリングヘッドフォンは、外部の雑音に対して逆の雑音（音波）をぶつけることで、二つの音が打ち消し合いノイズが消滅します。
同様にFAP療法では、「雑音（トラウマ体験）」を「雑音（トラウマを喚起させるコード）」で打ち消し合うイメージです。重要なのは、意識的にトラウマを思い出す必要がないということです。ある言葉をコードとして使用するため、無理にトラウマを思い出す必要はありません。
具体的な流れ
１．インテーク面接：初回面接で、これまでの人生の流れや現在の問題点について、詳しくお聞きします。カウンセラーは「中指ビンゴ（クエリ）」というFAP療法独自の方法で原因を探ります。
【「中指ビンゴ（クエリ）」は「本当の私よこんにちは」（著者 大嶋信頼氏 米沢宏氏 泉園子氏 共著））で詳しくご紹介されております】
２．セッション実施：実際のセッションでは、ご相談者様に特定のコード（言葉）を唱えていただきながら、カウンセラーも脳の共感反応（ミラーニューロン）を活用して別のコードを唱えます。この二つのコードが相互作用し、ネガティブな感情や感覚が打ち消されていきます。
FAP療法は簡易的な現代催眠を応用していますが、深い催眠状態ではなく、意識はハッキリしており軽くリラックスした状態になります。過去のトラウマを無理に思い出す必要がないので、精神的な負担が少ない療法です。
多くの方が「脳に心地よくコードが響き、リラックスできる」と感想を述べられています。
４．FAP療法を理解するための理論について
FAP療法は臨床心理学の以下の理論と深く関連しています:
ナラティブ・アプローチ：「言葉が世界を形づくる」という社会構成主義の考えに基づき、新たな自己物語（オルタナティブ・ストーリー）を作り出す技法です。個人が語る言葉の内容が変われば、自己の世界も変化するという考え方です。
外在化：「私はダメだ」という問題の内在化から、「自分のせいではない」と問題を本人から切り離し外在化する技法です。問題を客観的に見ることで、新たな視点が生まれ、解決への道が開けます。
ミラーニューロン： 1996年にジアコーモ・リッツォラッティ博士らによって発見された、他者の行動や感情に共鳴する脳内の神経細胞の働きです。例えば、緊張している人の近くにいると、自分も緊張してくるという経験はあると思います。これがミラーニューロンの働きによるものです。
FAP療法では、問題の外在化とミラーニューロンの原理を活用し、トラウマからの解放を促進します。
緊張や落ち込みが続く場合、それは自分自身の弱さではなく、ミラーニューロンを通じて受けた影響かもしれません。この視点により、自己批判から解放され、より自由な心の状態へと向かうことができます。
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