1.カウンセリングとの出会い

 

私がカウンセリングと出会ったのは、当時夫が勤めていた会社の専属カウンセラーを通してでした。そのカウンセラーはとてもパワフルで温かく愛情深い方で、カウンセリングを受けながら同時にカウンセリングについても学ぶことができました。

カウンセリングでは、特に母娘関係についてじっくりと向き合い学ぶ機会を得ました。それまでの私は、母娘関係のしんどさを宿命のように捉え、どうにもならないものだと思っていましたが、「そうではない」ということを知り、随分と心が軽くなりました。

ちょうどその頃、「毒親」という表現も世の中に広がり始めた時期だったと思います。「毒親」という言葉は耳を疑うような響きですが、実際に母親の支配が子どもに悪影響を及ぼすケースはあり、物理的にも精神的にも適切な距離を取ることの大切さを学びました。

私の母は、支配と共にかなりネガティブ思考の持ち主で、私もそれを受け継ぎ自分に対して常に「ダメだ」と暗示のように言っていました。

もし皆さんも育った環境の中で母親の支配を感じるなら、それを一旦「毒親」として認識し、適切な距離を模索しながら「トラウマ」の解消に向けて進むことが近道になると思います。

適切な距離が取れるようになると、自然に育ててもらった感謝の気持ちも湧いてきます。

私の例

再婚当初、母から離れて暮らすことになり正直ホッとしました。しかし、物理的に離れていても無意識のうちに母のことが気になり、毎週電話で母の愚痴を聞いていました。もちろん、愚痴を聞いても何も解決せず、ただ時間が過ぎるだけでした。

解決しないとわかっていても、電話せずにはいられなかったのです。

カウンセリングで母親との関係性についてお話しした時、カウンセラーが「毎週、電話するの?」と疑問を投げかけて下さったことで、「毎週電話する必要がない」という単純なことに初めて気づくことができました。

こんなにシンプルなことなのに、無意識のうちに行動してしまい気づかなかった自分に驚いた記憶があります。その後、連絡頻度を減らし、距離を置くようになりました。

距離を置いてもどこかモヤモヤする感覚があり、それが「トラウマ」であることを後で知り、その解消に取り組むことでさらに自由になることができました。

カウンセリングを通じて、母との距離感を学びながら、同時に人間関係全般におけるポイントも学ぶことができました。

2.カウンセリングで学んだ人間関係の洞察による発見

 

カウンセリングを始めたきっかけは母親との関係を改善することでしたが、人間関係全般についても学ぶことができました。人間関係の重要なポイントには大きく2つあります。

1つ目:人との距離感

合わないタイプの人とは距離を置き、合うタイプの人とは距離を縮めるというのが基本ですが、その最適な距離感は人それぞれ異なります。この感覚が相手の感覚と大きくズレてしまうと疲れてしまいます。

本来、人は無意識のうちにこの距離感を測っています。この感覚が身に付くには、幼少期に母親(母親の役割の方)に十分甘えられ満たされた経験が必要です。

この感覚が満たされていないと、他者との関係で母親との未解決の問題を埋めようとして距離を縮めたり、逆に恐れて距離を取りすぎたりして、バランスの取れた距離感が築けなくなります。

2つ目:個人の領域を尊重する

人には「領域」というものがあり、この領域を侵されると疲れてしまい、ここに多くの人間関係のトラブルが生じます。

例えば、自分が良いと思う感覚と、相手が良いと思う感覚は違って当然です。お互いに意見を受け入れ尊重し合えば、良い関係が築けるでしょう。しかし『こうしなきゃダメ』と自分の価値観を押し付けると、相手も自分も嫌な思いをします。これが人間関係の本質なのです。そして、相手に強制する部分を領域を侵すという意味になります。

この「領域」の概念が見えてくると、他者同士のもめ事も理解しやすくなります。お互いの領域に踏み込んだり踏み込まれたりして怒っていることがよくあるからです。

自分の領域に無造作に踏み込んでくる相手には距離を置いて、お互いに尊重し合える人間関係を築いていくのなら人生とても楽しくなります。

次回は、母親と距離を置いても残る罪悪感からの解放方法、トラウマを解消する「FAP療法」との出会いについてお話しします。