1.「すみません」ばかりだった私
思い返すと、かつての私は、
何かにつけて「すみません」と言っていました。
友人にちょっとした手助けをしてもらった時も、
誰かが親切にしてくれた時も、
「ありがとう」ではなく、「すみません」でした。
まるで、自分がそこにいること自体が迷惑なのだとでも思っているかのようでした。
本当は、心の底では「うれしい」「ありがたい」と思っていたのに、その気持ちを素直に伝えることができなかったのです。
なぜ、こんなにも「すみません」が口癖になってしまったのか。
それは、幼い頃から続いてきた「自己否定」の癖にありました。
2.自己否定は「無意識の防衛反応」
どうしてこんなにも、私は謝り続けてしまっていたのか。
その答えは、幼い頃の家庭環境にあり、母親の顔色を窺いながら生きてきたからです。
それが、私の生きるための知恵だったのです。
そもそも自己否定は、自分を責めたいから生まれるわけではありません。
多くの場合、それは無意識の防衛反応です。
私の場合
母を怒らせないように
母に迷惑をかけないように
母に嫌われないように
と、必死に母親の顔色を窺い、やがては周囲に合わせて生きる生き方を身につけた結果
「すみません」という言葉が口癖となって表現されていたのでした。
自己否定は、自分を傷つけるためではなく、
自分を守るために生まれた防衛反応だったのです。
3. 小さな「ありがとう」を始めたら
私がカウンセリングを受けた時、
私の師匠でもあったカウンセラーの先生が、包み込むような笑顔でこう言いました。
「人からの親切を素直に受け取るのも、立派な奉仕なんだよね」と、相手の好意を受け取る大切さを教えて下さいました。
その言葉を聞いた瞬間、
心の奥に張り詰めていたものがふっとほどけて、
「ああ、私は受け取っていいんだ」と、じわっと、深い温かさに包まれていきました。
本当は「ありがとう」と伝えたかった。
でも、どこかで受け取ることに遠慮していた自分に、ようやくやさしくOKを出せた瞬間でした。
それから私は、意識して「ありがとう」を言う練習から始めました。
最初は、「あっ、ここはすみませんではなく、ありがとうなんだ」と、考えながら伝えていました。
でも、意識して一回、また一回と、「ありがとう」と言葉にするたびに、
心の中に、温かい光が灯っていくのを感じました。
4. 変化は静かに、でも確実に訪れる
小さな「ありがとう」を積み重ねていくうちに、
ふと気づいたことがありました。
それは──
自己否定の声が、少しずつ小さくなっているということ。
以前の私は、
-
何か失敗するとすぐに「私はダメだな」と自分を責め、
-
誰かに迷惑をかけたら「ごめんなさい」と落ち込み、
-
人の優しさを素直に受け取ることもできませんでした。
でも今は、
誰かに助けてもらった時、
「すみません」ではなく、自然と「ありがとう」と伝えられる。
誰かに優しくされた時、
そのまま、素直にその温かさを受け取れる。
変化は、決して劇的ではありません。
でも、確実に、静かに、心に広がっていくのです。
そして、ある時、気づくのです。
「私は、もうあの頃の私じゃないんだな」と。
5. 自己受容への道──あなたにもできる
もし今、あなたが「すみません」と、つい言ってしまうのなら
もし、「こんな自分じゃダメだ」と思って苦しくなっているのなら
どうか、知って欲しいです。
その癖は、あなたが弱いからでも、ダメだからでもありません。
あなたが、これまで必死に生き延びようとしてきた証なのです。
自己否定の癖に気づいた時、まずは、自分を責めるのをやめましょう。
「また謝ってしまった」と思った時も、
「そんな自分もいたね」と、やさしく受け止めてあげてください。
そして、できる時には、
小さな「ありがとう」を言葉にしてみてください。
最初は、ぎこちなくても大丈夫です。
大切なのは、
自分を変えようとすることではなく、自分にやさしく寄り添うことです。
まとめ──あなたの中に、もう「ありがとう」は育っています
小さな「ありがとう」を積み重ねることは、自分自身と仲直りする旅のようなものです。
その旅は、
急がなくてもいいですし、誰かと比べる必要もないですよね。
一歩ずつ、一言ずつ、
あなたの中に「ありがとう」の光が育っていく。
そしてその光は、やがてあなた自身を、そっと優しく照らしてくれるようになります。
心軽やかに、あなたらしく生きる未来は、きっとすぐそばにあります。
今日、小さな「ありがとう」をひとつ、自分自身に贈ってみませんか?
(by ISA)