■ 大切なぬか床を守ろうとした日

今年3月の初め頃、私は思いがけない怪我をしました。
それは、自家製のぬか漬けを入れていた大きな陶器の入れ物を持ち上げた時のことです。
直径30cmほどの重たい陶器を落としそうになり、とっさに「絶対に守りたい!」と全身で支えました。
陶器はなんとかソファの上に置くことができたものの、勢い余って左足をテーブルの角に強打。

骨折寸前の重度の打撲。
夕方には足が象のように腫れ上がり、3週間以上まともに歩けず、ひどい痛みに悩まされました。
この時、私は初めて、歩けることがどれほどありがたいことだったのかを思い知ることになります。


■ 和食への転換と、ぬか床との出会い

そもそも私がぬか漬け作りを始めたのは、食生活の大きな見直しがきっかけでした。
昨年11月ごろ、吉野敏行先生のYouTube配信で「日本人の体には戦前の和食が合っている」という話を聞きました。(吉野敏明先生、通称よしりんの健康サイエンスチャンネルです)

戦後の洋食化が進む前の、素材を活かした油を使わない和食。
この食生活に切り替えてから、体調はさらに良くなり、夜もぐっすり眠れるようになったのです。

「体は、食べるものでできているな」
そのことを実感した私は、自然とぬか漬け作りにも挑戦するようになりました。

最初は味が安定せず悩みましたが、1ヶ月、2ヶ月と続けるうちに、ぬか床は見事に育ち、3ヶ月目には「自信作!」と言えるほど美味しくなりました。「美味しいよ~ん」


■ 小さな幸せに気づいた、怪我の時間

怪我をして、思うように歩けない日々。
それは、私にとって「当たり前」がどれほど尊いものかを気づかせてくれる時間でした。

寒い朝、ストーブのスイッチを押せばすぐに暖かくなること。
蛇口をひねれば、水だけでなくお湯も出ること。
ガスコンロで火をつけて料理ができること。

そして、自分の足で好きな場所へ歩いて行けること。
その一つ一つが、どれほど多くの人の手によって支えられているかを、深く実感しました。


■ ぬか床が教えてくれた、本当の守り

ある日、どうしても整形外科への通院が必要で、痛む左足を気にしながら車を運転していた時のことです。
怪我をしている時の運転は本来控えるべきですが、やむを得ない事情での短距離移動でした。

その時、横断歩道を渡ろうとしていた自転車の男性に、直前で気づくことができました。
もし足を怪我していなかったら、もう少し早いペースで走っていて、視界を遮る左折車の陰にいた彼に気づかず、事故になっていたかもしれません。

私は、ぬか床を守ったつもりでしたが、実は、ぬか床が私を守ってくれていたんだ~
そう思うと、胸が一杯になりました。


■ 感謝とともに歩む、これからの日々

怪我をして、不自由な日々を過ごして、私はたくさんの「感謝」に出会いました。

食事を変えて体調がよくなったこと。
ぬか床を育てる喜びを知ったこと。
そして、当たり前のように思っていた日々が、どれほど奇跡にあふれているかに気づけたこと。

これからも、自家製のぬか漬けを育てるように、感謝の心も育てながら、日々を大切に生きていきたいと思います。


(あとがき)

もし今、何か不便さや痛みを感じている人がいたら、

もし今、何かに上手くいかないと感じている人がいたのなら

それは、未来のあなたへの優しいギフトなのかもしれません。

ぬか床に育てられた私から、そんなメッセージをそっと贈りたいと思います。