1.FAP療法との出会い
私が「母の支配」から自由になれたきっかけの大半を占めるのは「FAP療法」との出会いでした。FAP療法に出会うことができたのは、大嶋信頼先生の書籍「自己肯定感が低いあなたが変わる方法」をたまたま本屋さんで目にして購入し、読ませていただいたことからでした。
日頃から「自己肯定感」が低いことを自覚していましたので、この本のタイトルが目に飛び込んできたのだと思います。
その本をきっかけに「支配されちゃう人たち」「ミラーニューロンがあなたを救う」「無意識さんの力で無敵に生きる」などなど、はまり込んで読ませていただきました。
大嶋信頼先生の書籍よりFAP療法に出会えたのですが、「FAP療法」(Free from Anxiety Program: 不安からの解放プログラム)は、主に「トラウマさん」を解放していくのに特化した心理療法です。
自己肯定感が低いのは「トラウマさん」が大きな要因の一つでした。「トラウマさん」と聞くと、そこまでではないと思われる方が多くいらっしゃると思うのですが、いやいや、多かれ少なかれ案外「トラウマさん」の影響はあるものです。
産まれてきた家庭環境について「望んで生まれてきたわけではありません」と思うことって結構あるのではないでしょうか?それって「楽しくない、生き辛いことがあるよ」ということのように思います。
私は「トラウマさん」で、しんどい思いをしているという自覚がありましたので、書籍と出会ったその年に「FAP療法」を受け、セラピストさんのお力をお借りして「トラウマさん」を解消していきました。
解消されていくと共に、どんどん母親の支配から自由になっていく体験をしました。「FAP療法」を受ける前から母親が支配的であることはわかっていたのでが、距離を取りつつもなかなか心が自由になることはできなかったのです。
「FAP療法」による「問題の外在化」の一つに「支配者」という捉え方があり、私が自由になれたのは、この概念でした。
「支配者」という役割があるということなのです。(詳しくは、3.「FAP療法」による「問題の外在化」の一つ「支配者」の捉え方で紹介しています)役割と知るとかなり自由になれ、抜け道の光が射してきた感覚でした。客観的に見るには非常にいい捉え方です。
もちろん、母親は支配ではなく「愛情」と思っていますし、私も確かに「愛情」であると感じる部分もありましたので、自由になることが難しかったのだと思います。
もし、母親の支配、俗に言う「毒親」(影響力が強いという意味です)と言われる関係性で悩んでいらっしゃる方がいらしたら、「FAP療法のいう支配者」といった捉え方は参考になります。(^^)
2.問題の外在化とは
「問題の外在化」とは、ナラティブアプローチという心理療法の概念の一つです。
「FAP療法」は、ナラティブアプローチの「問題の外在化」を行っていきます。つまり「FAP療法」は、ナラティブアプローチ(物語のケア)の捉え方と、とても似ています。
「外在化」とは、問題を文字通り外に位置付けることです。「外在化」に対して「内在化」がありますが、こちらは、問題を内に位置付けることになります。
私達は、何か上手くいかないことや望ましくない状態になった時、本来は「このような状況や状態になっているだけ」とシンプルなのですが、何が原因なのかを考え探してしまいます。
特にお仕事で問題があれば、「このような状況や状態になっているだけ」というわけにはいきませんよね。(笑) 原因を探り改善策を探るのが通常です。
この感覚で、自分自身のことで上手くいかないことがあれば「原因」を探ります。
例えば、職場での人間関係や親子関係で、相手が感情的で強い言い方をして落ち込んでいると「性格が弱いから」とか「神経質で、反応しやすいから」などと考えたりします。これが「原因の内在化」です。これってすぐに変えられないので、苦しいですよね。ただ、自分を責めてしまうだけで、状況は変わりません。
次に「原因の外在化」なのですが
「会社の方針が悪いから」「売上ばかりで職場の人間関係がぎくしゃくするのよ」とか、会社でのストレスが溜まって「親子関係もぎくしゃくするのよ」となります。
こちらも変えられないどころか、会社の方針を変えようとすると、よりぎくしゃくして上手くいかなくなります。
他者や会社、特に社会は個人の力ではなかなか変えられないし、家族のなかでも親を変えられないので、しんどくなるだけですよね。私のお母さん優しくないから、理想のお母さんにチェンジなんてできるといいですね。(笑)
ナラティブアプローチでは「原因」ではなく「問題」そのものに注目して「問題の外在化」を行います。
例えば「人間関係が上手くいかない」といった時、原因ではなくそのことだけを見ていくのがナラティブアプローチの「外在化」なんです。自分の性格や相手の受け取り方に「原因」を求めないということなのです。
具体的に私の例でお話しますと
私は、母との関係性に悩んでいました。母に会った時は、だいたい愚痴を話してくるので、聞いていて私もイライラしていました。よーくその場の問題点にだけ目を向けていきます。すると、案外シンプルだったりするのです。
3年前に他界した母は、2年程、寝たきりになり施設でお世話になっていましたが、その時「室内のエアコンが効きすぎて寒い」という状況がありました。母は、今は寒くないのですが、寒くても寝たきりで動けないため、職員さんが来てくれるのを待つしかないのです。待っていると、順番に来て下さりちゃんと調整していただけます。
それをただ「室内のエアコンが寒い」と嫌な怒った表情で私に話しますので、その怒りが伝わり私も嫌な気持ちになっていました。よく確認すると実際には「今は、大丈夫やけど」なんです。それを「原因の外在化」だと直ぐに調整してくれない施設が悪いとなりますし、「原因の内在化」だと、待てないせっかちな母親の性格が悪い、私もその母親に反応して「冷たい娘。ダメな娘」となってしまいます。
問題点は、感情によって見えなくなることが起こるため、客観的に見ていくことがポイントになります。
そこで、ナラティブアプローチでは別のストーリーを描くことで「問題の外在化」を行います。
母がイライラして怒り始めると、私も必ずと言って良い程イライラしちゃいます。そうすると、そのイライラ感情に「あだ名」をつけてみます。「イライラしてきたな」という時、私は「かんちゃん」と名付けました。癇癪持ちの母親に反応している私なので「かんちゃん」です。「癇癪持ち」というと嫌な感じがしますが、「かんちゃん」と言うと自分の心が「ほわーっ」としてきます。(笑)
母が怒っていると私もイライラ。「ああーー、かんちゃんのお出ましね」「今日のかんちゃんは、威勢がいいわ。パワフル」と心の中で「かんちゃん」に話しかけてみます。
すると、私のイライラが治まり、くすっと笑いも出てきたりしました。そうなると母には、自然に優しい気持ちで接することができ、何とお互いハッピーになれました。
つまり、この状態は、意識して判断することから解放されて「無意識さん」が働いてくれます。「無意識さん」は、良い悪いの判断がありませんので自由になるわけです。
「FAP療法」では、ナラティブアプローチのように「あだ名」をつける方法は行いませんが、母娘でお悩みの方がいらしたら、自分が楽になるために望ましくない感情や状態、あるいは何かしらの症状が気になっていたらその症状にも「あだ名をつける」という方法を試してみて下さいね。
3.「FAP療法」による「問題の外在化」の一つ
「FAP療法」では、ナラティブアプローチの「問題の外在化」をまた違った視点で行い、とても興味深いのでご紹介させていただきますね。
私は、母との関係性でイライラする母を何とか治めないと、と思ってきましたが、それは母親の思う壺。母親は、実は「支配者さん」だったのです。「支配者」という役割を担っているという捉え方なのです。
「支配者」という表現に驚かれると思いますが、役割、つまりお仕事として捉えていきます。会社でいう役職のようなものですね。
会社で例えるなら、上司や役員の方とは仲良くなろうとはしませんよね。程よく、どれ位の距離を取った関係性がいいのかを測っていくと思います。その時、期待したり期待に応えようとすると身構えてしまい上手くいきません。できる限り力を抜いて柔軟に捉えた方が上手くいきます。
その感覚で、母親を客観的に見て程よく距離を取っていきます。
そして「支配者さん」に支配されがちなのが「虚無さん」です。「虚無さん」は、とても穏やかな凪を感じて生きていきたいのですが、「支配者さん」に振り回されて心の中は大嵐です。(笑) というのが「虚無さん」が陥り易い特徴です。
巻き込まれると大変ですし「支配者さん」は、巻き込むのがお上手。無意識のうちにツボを心得ていらっしゃるような、上手く罪悪感を感じるように巧みに支配するような印象さえあります。
と言ってもお互いに感覚で反応し合っているだけなので、自覚はないのですが。
この役割の担当別という捉え方が「FAP療法」から見た「問題の外在化」の一つです。別のストーリー(オルタナティブストーリー)を描き出しています。ストーリーを描き出していくという意味で、ナラティブアプローチと似ています。
私は、この「問題の外在化」で、無理して母に合わすことなく、楽に捉えることができて助かりました。無理をしないので、少しばかりの母の我がままも笑顔で対応できましたよ。
無理をしていた時は、とても優しく接することはできませんでしたので、自分が楽になり自分が自由になることが一番先にやることなのだと気づきました。ぜひぜひ、問題の原因を「内在化」で自分のものにせず、「問題の外在化」で自由になって下さいね。